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第6回 彼らはがっちり持っているんですよねえ。

石原:それにしても、ぼくらはやはりアメリカから大変大きな影響を受け続けていると思いますが重松社長が「影響を受けたアメリカ」は特にどこ、あるいはどの部分でしょうか?

重松:僕がファッションでいちばん影響を受けたのはハリウッドの映画スターだと思います。
仕事の仕方とか生き方みたいな部分ではニューヨークですね。
80年代のはじめから20年間ずっとアメリカを見てきていますけど、アメリカはその時が一番豊かだったような気がします。本当は50年代、60年代が豊かだったのかしれませんが。
何かを生み出したりするその時のエネルギーとかはすごいし、実際ガムシャラに働きますしね。
そういう空気にはすごく触発されました。なんてたって元気。
最近のアメリカはあんまり楽しい方向には進んでないみたいですが、それでもやはりアメリカにはエネルギーを凄く感じますね。動機は別として。

石原:その他によく行かれるところっていうのは?また「旅する」ことについてどう思われますか?

重松:イギリス、フランスもイタリアもよく行きます。
また、旅は大変重要だと思います。人間を形成するために。
日本人で良かったな、と思うのはそれぞれの土地でいいとこを必ず見つけますよね、日本人って。
でもそれを本質ではなくて「ウワベ」にひかれてしまう傾向もありますが。
日本人の加工貿易ではないですけれども、そういうような習性っていうのがどうしても僕の中にもあってですね、それがなんか賤しいなといつも思ってしまいます。

石原:もうちょっとその辺を伺わさせていただくと?

重松:日本のこのいわば輸入文化っていうのはエセですよね。土地に根付いて消化されている文化ももちろんありますけど。実際大半の状況はこれで良かったのかな、と思います。
まだ途中なので、我々の数世代あとぐらいには見えてきそうですけれども、ウワベ文化が形成されてるじゃないですか。なんでも取り込むのが早くて。
確かにそういう部分は一方で日本人の優秀性でもあるのでしょうが。
技術はある程度つくりあげるし、取り込んで磨けるし、進化させられるし・・でも、じゃあ自分達のモノはどこにあるの?と言った時にパッと周りを見たら何も無かったっていう。

石原:文化と言う意味では、日本にはもともと根っこがなかったんじゃないでしょうか。数千年の歴史の中に。
どうも中国から受けたりしながら、さっきの「個」の問題も含めて「私達って何なのか?」っていうのが歴史的にずっと見当たらないですよね。
そういう意味ではどうですか?たとえば同じ島国のイギリスだとかは。

重松:必ずありますね。

石原:僕らは下手に持っちゃうと、数十年前の軍国主義みたいに、例えば天皇にすっと収斂させてしまう。自己を確立する方向ではなく、集団の象徴をつくりたがります。
僕は中学、高校あたりから自分がどうあるべきかと考え出した頃から、日本人的で無いようにしようと思ってきました。
重松社長は「自己確立」についてはどんなふうにしてこられましたか?

重松:ぼくは「インディペンデント」っていう言葉が好きなんですよ。
常にそれを意識してきました。
群れない。属さない。「independ」は「depend」しない、つまり「頼ら」ないです。
ユナイッテッドアローズの理念にしてるのに「メイクユアリアルスタイル」っていうのがあります。
ホントの自分って何なのかを自分で探しなよっていうのがUAのテーマです。
社内向けには、スタッフは自分の中で自分を確立しなさい、っていう事です。また、お客様に向かっては私達の能力全てを使ってお客様のスタイルを作ります、というメッセージでもあります。

石原:重松社長のおつき合いのある諸外国の方々っていうのはそういうのはキチっと持ってますか?

重松:彼等はがっちり持っているんですよねえ。

石原:僕は先程申し上げたように、日本人的でありたくないという否定形の上に自分を作ろうとしてたんですけれども。ですからアメリカ人になりたいとか、イギリス人になりたいとかではないんです。
自分は原点はどこまで言っても自分意外ないと言う。でも自分をふくめた「日本人」を考えてみた時に、もうちょっと「美」というものが真中にきていいんじゃないかなと。
そうするとなんだか日本人がもう少し確かなものに見えてきそうな気がしています。
「美」というものに関しては我々は固有のかなりいいモノを持ってそうな気がするんです。

重松:僕も同感です。
日本人のように、何がほんとに美しいのかって言った時の奥の深さを昔から知っている民族はまれだと思うんです。

>>次回は、重松社長の原点ともいえる
  幼い頃に触れた「アメリカ」のお話です。お楽しみに。(次回12月13日予定)
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