第10回 そして美しさがあって
石原:それの問題(第9回より)とUAの原点にある「トラッドマインド」との関係あたりをお話いただけますか?
重松:メイクユアリアルスタイルっていうのはトラッドマインドになれっていうことではないんですけれども、我々が本質的な部分で、我々のスタイルとして「選ぶべきだろう」と提案し続けているのが「トラッドマインド」という事で、それらのモノは歴史に支えられた技術であり、機能であり、クオリティ、そして美しさがあってということを言っているんです。
それを自分達の価値観の参考に、という提案なんです。
石原:ただ、日本人の場合そういう本質的な部分に感心するよりはブランド名みたいなものに、それを持つ事で納まってしまう人が結構多くないですか?
重松:ええ、それがほとんどでしょうね。本当の美や機能、クオリティを見るべきシーンなんですけれども、それを通り越しちゃって、上に付いてる看板に納まっている。でもそれはそれで悪い事ではないと思うんです。
そういったのじゃないのを買うよりは高いお金払っても投資効果ありますから、そしてやはりビッグブランドっていうのは全て兼ね備えてるモノが多いのですし。
ただ、もうちょっと本質を理解した上でモノは買った方が・・・なぁんてそんな偉そうな事言ってもなぁ。
石原:その対極にあるユニクロの存在はどうですか?
重松:ユニクロは日常のアメリカジが基盤ですから、
あれは僕はいいと思いますよ。
しかしもっとデザインが開発されなかったのが今低迷※1の原因でしょう。
石原:あの量のバリエーションの上になおかつ商品開発をという事は今後もありうるんでしょうかね?
重松:今は飛び交っているのは「ありえない」という仮説なんでしょうけれども、ぼくはあり得ると思うんですけれどもねえ。
石原:ひとまずベーシックなものがあって、じゃあ今後は例えば色柄を変えて行くとか、そんな感じでしかないんじゃないでしょうかね?
重松:いや、もっと完全なレベルでのファッション性というものを作れる体制を整えていくべきなんでしょうね。
ずっと長く着れるモノ=ベーシックっていうのは投資効果が非常に高いと思うんです。
でもそこで例えば安価なTシャツ、1000円だから来年また3枚買えるというようなサイクルづくりは非常にうまいと思うんですけれども。
低迷の要因っていうのは前の年に売れたモノに固執しすぎた事だとも思うんです。
定番を進化させていなかった、という事なんですが。
石原:今までの生産と販売のあれだけのハイスピード。
長期に渡ってそのようにやって行くにしてはちょっとリスクが大きかったのでしょうね。
重松:それはそうでしょうね。
※1対談が行われた2002年7月の時点。
>>次回は、ユナイテッドアローズ社長 重松理バージョン最終回。
お楽しみに。(次回1月10日予定)
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