第4回「20世紀にはたくさんの美しい日用品が生まれた。」
織田:先日もデンマークの美術館の館長がいらっしゃって、
これらをご覧になられて、
「我が国とはあまり交流がありませんでしたが、
これからはぜひ私の美術館との交流を考えて欲しい。」
と言われました。
石原:でも日用品という範囲で集めはじめるとなると、
大変な数となりますよねえ。
織田:ええ、終わりがないでしょうね。
ですから、僕は決して自分一人で集めようなんて
思ってないんです。
例えば柳先生がお持ちのもの、
清家先生がお持ちのものなどと、
日本にはいろんな人が
いろんな良いものをたくさんお持ちです。
しかし、問題なのは「代替わり」なんです。
例えば清家先生の息子さんは今、
慶応大学で経済学部の教授をなさっているんですが、
お父様の集められたものには
あまりご興味がないようで、
清家先生の蔵書を全部、札幌高専に寄贈されました。
つまりそれを受け継ぐべき子供さんが
価値観が違ったりします。
日用品となればそんな場合捨てられる運命にも
なりかねないんですよね。
だから手後れにならないうちに、
今がもうギリギリだと思っているんです。
かつて日本の貿易が自由化になったとき、
イタリアやらアメリカ、北欧などから
優れたものが日本にたくさん入ってきました。
それをまっ先に買ったのは、
当時のグラフィックデザイナー、建築家、
プロダクトデザイナー達だったんです。
そしてそれを持ち続けた方々の大かたが、
今80才を過ぎてきておられるんです。
石原:織田先生がそういったものを収集される時は
どういう所で収集なさるんですか?
織田:ぼくの場合は外国に行ったり、
外国のオークション会社から
カタログを送ってきたり、といったアプローチが
あったりですね。
石原:ところで・・・先生のちょうど後ろにある収納家具は?
織田:これはデンマークの
「近代家具デザインの父」と言われている
コーア・クリントが1930年にデザインして
70本だけ作られたもののひとつです。
これは凄い家具で、その当時作られていた
同じサイズの家具と比べると
2倍も収納できるんです。
可動式の棚の仕切り幅が非常に細かくなっていますので、
大小の収納物によって対応できるんです。
石原:ほお・・・これが1930年にですか。
これはすごいですねえ。
織田:こちらのガラス器は
イタリアのムラノ島で作られたものです。
これ、きれいでしょう。
このガラスの格子のなか
全部ハンドメイドで気泡が閉じ込めてられているんです。
石原:これはすごい・・・。泡ですか。
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左:ムラノ島製のガラス器 右:コーア・クリント |
織田:こちらの人形は親父の形見です。
親父はむかし宮司をやってまして、
その時のものです。
石原:すごいものですね。
しかしこうやってほんのすこしでも
改めてご説明を受けて見渡すと、
聞きしに勝るご自宅ですね。
織田:ここは旭川空港から
ほんの2、3キロの東神楽町というところですが、
農家の方にこの山を譲っていただいたんです。
あの林の向こうまでが敷地です。
4800坪以上はあります。
この家には僕は本当に思い入れがありまして、
自分で数百枚以上スケッチを書きました。
家族がみんなで過ごす場所、
仕事部屋、そして地階は椅子などの
収蔵スペースになっています。
マスタープランは私自身の設計です。
石原:しっかりここに根をはやしたような
たたずまいですよねえ。
うらやましい限りです。
織田:この前も近くの農家の方々が見えられました時、
「自分達はただの小さな山と思い、
雑木林と思っていたけれど、ここがこんなに景色のいいところで、
白樺がこんなに美しい樹であるとはじめてわかった」
とおっしゃられました。
>>次回は、「美しい日用品」のお話です。
お楽しみに。
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(左、上写真)「20世紀の美しい日用品」コレクションのほんの一部
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