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第7回「デザインは『より多くのひとの為に』という前提条件を持っています。」

織田:本当に夢中になれるものがあるという事は幸せですよ。
僕は「椅子」と「日本の民家」の研究という
2つもライフワークを持てて、
なんて恵まれてるんだろうと思っています。
例えば、大学の同級生にすごい資産家がいます。
だけれどその資産というのは
親から子へ継がれるだけなんでしよう。
僕は生きている限り自分のやったことで
多くの人に影響を与えたい。
僕は自分の研究した成果を本にして、
一冊1000円でもいいから
100万人の人に読んでもらいたい。
後世への何かを伝えることができることこそ
僕は生き甲斐だと思っています。
だから先程申し上げた「美しい日用品ミュージアム」も
この近郊になんとか造りたいんです。


石原:日本という国は、いままで侵略されたり
したこともなく平静で、豊かすぎたのかもしれませんね。
文化の必要性とか民族の誇りだとか、
どんなことをしてでも守らなきゃいけない
といったギリギリの一線がない。

織田:それと、戦後の復興が
あまりにも急激に、スムーズに行き過ぎたのでしょうね。
かつては日本も何代もかけて資産を貯えて、
それなりの家柄ができた。
そこで培われた文化などは
戦争で断ち切られてしまった。
その後経済の成長速度に比例して、
お金に余裕のある方々がたくさんでてきて・・・
その辺りから文化に対する価値観というのが
変わってきたと思うんです。

石原:ええ、社会構造的には
平均化する作用としていいこともあるんだけれども、
縦で繋がってきたものも
完全に切断してしまったんでしょうね。

織田:そういう状況で現在に至って、
人間がスピードに付いていけない状態に
なっていますよね。
僕なんか取り残されたっていいやと思いながら、
ここで自分のペースでできる事を
コツコツとやっていって、
将来それが残ったらいいなと思ってやっているんです。

石原:ところで、デザインという概念は一言でいうと・・・

織田:これは、いまでは
意味として広くなり過ぎていますけれども、
端折って言えば、「より多くのひとの為に」という
前提条件を持っています。
ここがアートとの違いです。
アートはその作家本人が納得すれば、それで成立しますが、
デザインというのは100人を対象にした時に、
限りなく100人に近い人から
良いリアクションを得ないと良いデザインとは言えないんです。

石原:ま、時間のズレで後で評価されるということはあり得てもですね。

織田:もちろん、そういうこともあるかもしれないですが。
それはアートの世界でも同じですね。
そして今は作家の名前などが
前に出てきている時代になりましたね。
やっと日本の一般の人達がデザインに対して
興味を示しだして、雑誌がデザイン特集を組むと
売上げが上がるようになりました。

石原:デザイン発展途上国から、
みんなの認識がどんどん深まっていって、
その芸術性というものをもっともっと
認めてもらえるようになると嬉しいですね。

織田:日本において、
なぜデザインの社会的地位が低かったかというと、
旧通産省管轄だったからです。
アートは文化庁だったんです。
この違いが決定的なのです。
デザインというのは商行為を伴うことがほとんどですよね。
だから卑しくて、低いものと。
一方アートは非常に純粋で、崇高なものだという認識です。

石原:なるほど。

>>次回は、ひきつづき、デザインとアートの違いについて。
  織田先生のご自宅への思い入れなども。お楽しみに。



〔織田先生のご自宅の様子〕

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