第11回「強いて言えば『自分とのつき合い方』というか、
    日々刻々と変化する自己発見の旅の過程を
    形にしたものではないですか。」


石原:最近の映画では?

栗野:最近ですとスペインの監督で
ペドロ・アルモドヴァルですね。
彼の「TALK TO HER」というのを見て、
これはすごく感動しました。

石原:そんなにいい映画ですか、
機会があれば僕もぜひ見てみます。
ところで、おすすめの「ファッション系の雑誌」を
教えていただけますか?

栗野:ああ、それは「イタリアン・ヴォーグ」ですね。
これがあれば他のファッション誌は
いらないんじゃないかと思うくらいです。

石原:あくまでも「イタリア版」ですか?

栗野:そうです。
あらゆる「ヴォーグ」の中で
ファッションのもつファンタジーというものを、
引き続き創出している、
同時に時代をきっちりとらえて、
今の時代だからこそこんなファッション・ファンタジーがある
というのを見せてくれるのは
「イタリアン・ヴォーグ」しかないんですよ。
ファッションというのは結局ファンタジーだと思いますし、
リアリティと両極だと思うんです。


石原:ファンタジーを
もう少しわかりやすく言っていただくと?

栗野:“夢”あるいは架空のものとか。

石原:架空のものを自分のものとして実現すること、
というような意味ですか?

栗野:いえ、それはファッションのもつ機能面のことでしょう。
ファッションストーリーとしていえば、例えばあるシチュエーションがあって
モデルが服を着て表現することによって、
僕らに違う世界を見せてくれるという…。

石原:なるほど。

栗野:それが自分にとってリアリティがあるとかないとか、
その服が欲しい欲しくないとは関係なく、
ファッションだからできる違う世界の創出ということを、
ちゃんとやっている珍しい雑誌ですよ。

石原:だから良いファッション誌を見ると、
人は何かワクワクさせられるんですね…?

栗野:だと思いますよ。
そのワクワクの元だと思いますよ。
いま、それがないんですよ。
ほとんどはカタログかサブカルチャー本になってしまいましたから。

石原:さて、本日の本題中の本題、
みんなが栗野さんに聞きたがっていることだと思いますが。
服というのは、着るというのはこういうことだ、
あるいはカッコよく着るとはこういうことは
この辺をこうすることだとか言えるものでしょうか?
この辺をしっかりお伺いしたいのですが…。

栗野:ないでしょうねぇ…。(笑)

石原:ないですか。

栗野:強いて言えば「自分とのつき合い方」というか、
日々刻々と変化する自己発見の旅の過程を
形にしたものではないですか。

石原:自分自身の旅?

栗野:だから「らしさ」というんでしょうか。
どんなに素敵な服を着ていても、
その人らしくなければステキじゃないし、
全然時代とかけはなれた服を着ていても、
あの人らしいねぇといえる人はカッコいいですよね。

石原:はぁ…。



>>次回は、「人は見かけによる」との栗野氏発言で
  話は盛り上がります。お楽しみに





2006 spring
copyright (c) 2006 by OKUNO all right reserved



これまでの特集対談

ユナイテッドアローズ常務取締役クリエイティブディレクター
栗野宏文 ver
第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>
第7回目 >>
第8回目 >>
第9回目 >>
第10回目 >>
第11回目 >>
第12回目 >>
第13回目 >>
第14回目 >>
第15回目 >>
第16回目 >>


優佳良織 織元
木内綾 ver
第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>
第7回目 >>
第8回目 >>
第9回目 >>
第10回目 >>


北海道東海大学教授
織田憲嗣 ver
第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>
第7回目 >>
第8回目 >>
第9回目 >>
第10回目 >>


北海道東海大学大学院生
張彦芳 ver
第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>


同済大学建築設計研究院院長
丁潔民博士 ver
第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>


吉田カバン会長
吉田 滋 ver

第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>
第7回目 >>
第8回目 >>
第9回目 >>
第10回目 >>
第11回目 >>


ユナイテッドアローズ社長
重松 理 ver

第1回目 >>
第2回目 >>
第3回目 >>
第4回目 >>
第5回目 >>
第6回目 >>
第7回目 >>
第8回目 >>
第9回目 >>
第10回目 >>
第11回目 >>