第10回「誰でも自分の中に音楽なり映画なり
    言葉なりを持っているんですよ、実は。」


栗野:ベルギーはそもそも小さい国なので、
ずっと廻りにいじめられてきたわけですよね。
小さな国がそれでもアイデンティティを保とうとすれば、
お金を持っているか、発言力があるか、
頭が良いかしかないでしょう。
だから、そういう国になっていきましたよね。
結局ベルギーは。

石原:そうですか…。

栗野:だってブリュッセルにはEUのセンターもあるし、
NATOの本部もあります。
何でブリュッセルかといえば
ジューイッシュマネーが働いたということでしょう。
第二次大戦でユダヤ人を排斥しなかったのは、
スイスとベルギーだとかですから。
まぁ、ギリギリ考え抜いた長期戦略だったのでしょうね。
それは。
小さくていじめられ抜いた国の面白さを、
ベルギーにはすごく感じますよ。
「インディペンデンシー」ということを、
あの国には強く感じます。
僕にとっても、うちの会社にとっても、
これからの日本という国にとっても、
「インディペンデンシー」は一番大きいテーマです。
日本人の弱点だと思いますから…。

石原:ここでちょっと話題を変えさせていただきます。
「お好きな音楽」は?

栗野:僕は何でも好きですよ。
でも自分が影響を受けたというのは、
やっぱりビートルズとかローリングストーンズとか
デビッド・ボウイとかです。
ロキシー・ミュージックは自分にとっていろんな意味での原点です。
英語の先生でもあります。

石原:英語の先生ですか?

栗野:すごく好きだったんで何を言っているんだか知りたくて…。
ビートルズとかローリングストーンズとか、
とくにデビッドボウイのロキシー・ミュージックは、
歌詞がすごく面白いんですよ。
それを辞書を引き引き理解することによって、
ロックには音以上のものがあるということが
発見できたんです。

石原:なるほど…。

栗野:最近思うのは、
誰でも自分の中に音楽なり映画なり
言葉なりを持っているんですよ、実は。
すごくいっぱい、生まれながらにして。
で、それに近いものやそれズバリのものを誰かが作って…。
「あ、それ知ってる!!」
「それは僕の中にもありますよ」という感じに近いんですよ。
グッドバイブレーションとか
自分の中にある本質的なサムシングと共鳴し合うというのかな〜。

石原:なるほど。もともとあった感受性に呼応する…。

栗野:最近ロンドンで「アウトサイダーアート」というのを見ました。
もともとは精神障害の人とかが、
自動筆記のようにガーッと描くものを
「アウトサイダーアート」と言っていたようですが、
最近は正規の美術教育を受けていなかったり、
「アート」という概念を持たないでやっている人なんかを
「アウトサイダーアート」と言っているようです。
今言った感受性とは、
こっちの方に近いんじゃないかと思うんですよ。

石原:はぁ…。

栗野:禅寺で聞いたのですが、
禅の書というのは練習しちゃいけないんですね。
禅宗のお坊さんには、作品という概念はないんです。
うまいとかへたとかというのもないんだそうで、
書いたことがそれ自身で完結。
書いている時間が1番大事で、
書いている時間の記録としてまず憶えている、
という話をお聞きしたときに僕は
すごくピンときました。

石原:なるほど。

栗野:ヘタウマっていいますか、
僕が好きな音楽は、瞬間があらわれているもの、
演奏者のキャラがあらわれているもの、
演奏者の人となりが音になっちゃってるようなものです。
そういうものが1番フィットしますね。

石原:ついでに、お好きな映画は?

栗野:そうですねぇ、クロード・ルルーシュの「男と女」、
それからアラン・レネの「去年マリエンバードで」。
モニカ・ビッティが出た「口唇からナイフ」というのも好きですね。
女優でいえば、
それこそモニカ・ビッティ、アヌーク・エイメ、
シャルロット・ランプリングとか、
ロミー・シュナイダーとか、
大人っぽい女優がいいですね。
監督の作品ということでは、
ジャンルックゴダールの映画はたくさん見てますね。
かなり映画は好きですね。



>>服を着ると言う事はどんな事?
  次回は皆さんが聞きたがってる話題に突入しますよ。
  お楽しみに!





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