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第4回「『9・11』はフィロソフィカルな次元で、 今の世界にものすごく影響を与えた。」 栗野:ベルリンの壁、ソビエト連邦崩壊などは 歴史の必然性があってああなったし、 それはポリティカルなチェンジが主軸だと思うんですよ。 でも、同時多発テロは突発的ですよね。 違う見方をすれば必然性なのかも知れませんが…。 石原:ええ、違う見方をすれば。 栗野:でもさすがに、ほとんど予測不可能なことだったと思うんですよね。 そして、パンドラの箱が開いてしまった ということだと思いますね。 そのことの意味をきちんと考えないアメリカの共和党政府が、 ああいうリアクションをしたことによって、 事態は最悪なコースになってますよね。 石原:しかも増幅されてね。 栗野:ええ、そうですね。 暴力の連鎖反応っていうことですよね。 僕にとっては、ドメスティック・バイオレンスと一緒ですよ。 親にいじめられて育った子は、 また子供をいじめる。 先輩にいじめられた学生は、後輩をいじめる。 暴力っていうのはやられたら、自分の中に常にトラウマとして残っていて、 自分がやることでしかそれは超えられないっていう、 非常にネガティブな連鎖があるじゃないですか。 ですからきれい事に聞こえるかもしれませんが、 勇気をもって自分の代で止める、という風にしない限り これは絶対もう止まらないですよね。 石原:やられたということを、 ある意味アメリカは同価値で反応してますよね。 これを決して流すんではなく、 別の価値にして行かなきゃならないんだろうということですよね。 栗野:何故アタックされたんだろう、ということを ちゃんと考えるという事と、 もちろんそれに関して二度と起きないようにするのは大事だけれども、 その前に自分たちがそれだけの事をされちゃうような、 何かをしてる訳じゃないですか。 そっちの問題を自覚するべきなんじゃないかと、 僕は思いますけど。 石原:かなり彼らは無自覚でしょうからね。 栗野:ぜんぜん無自覚ですね…。 極端な話、僕が子供の頃、 オーストリアで10人くらいしかいない 日本人の中の1人だったことでいじめられたことと、 帰ってきて帰国子女だっていじめられたことと、 ひょっとしたら関係してるかも知れない訳ですから。 そういう差別されたり、 いじめられた事で。 石原:なるほどね…。 栗野:「9・11」は単にポリティックなだけでなく、 フィロソフィカルな次元で、 今の世界にものすごく影響を与えた事件だと考えています。 ファッション業界はそれと不可分であると思っています。 石原:話題を変えさせていただきますが、 栗野さんはUAの前はビームスにいらっしゃったとお聞きしております。 更にその前はどのようなことをなさっておられたのですか? 栗野:その前は「鈴屋」にいました。 77年に入り1年半くらい。ビームスには11年間いたんです。 重松現UA社長と一緒に。UAを創設したのは89年ですから、 それからもう15年です。 石原:鈴屋の頃はご年令は? 栗野:24、25才の頃です。 石原:やはり服が好きで…? 栗野:僕は実は音楽がすごく好きで。 自分のいろんなアイデアの元になっているものや、 生きているエナジーをくれるものは、 僕にとっては音楽なんですよ。 大学を卒業して就職する時に、自分が一番好きなことを仕事にするのか、 そうじゃないのかという…。 で一番好きな音楽はとっておいて、 何番目かに好きな洋服の仕事をしようと。 そうすると自分が行き詰まった時に、救いようがあるじゃないですか? それに音楽からヒントが得られるし。 もし音楽を本業にしていたら、 全く逃げ道がないですから。 >>次回は栗野氏が「洋服屋」を選択した背景が展開されます。 お楽しみに。
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