第16回「人生とは学びの連続であるし、喜びの連続ですね。」

栗野:シー・アイランド・コットンのシャツでなくたって
良いシャツはあるし、
アクリル着ててもカシミヤに見える人もいるわけですから。
だから自由ってなんだろうと、
責任をもって追求することではないですかね。

石原:そのためには何をすれば良いでしょう。具体的には?

栗野:多くの人に会うとか、
人の話を全部ちゃんと聞いてみるとか…
旅をするとか…
違う国の言葉を学ぶとか、
映画を見るとか、
本を見るとか、
要するに自分のキャパを広げて、
引き出しの数を無限に増やすことじゃないですか。

石原:はぁ。

栗野:すべてのものから学べるということだと思います。
幸い小売業は1歩でも外に出るとすべてから学べますよね。
僕は今でも電車通勤なのですが、
つり皮につかまっている人、
駅に立っている人の服、
会話の内容全部が勉強になります。
そういう感じに何からでも学びとることが重要じゃないですか。

石原:なるほどね。自分を柔らかくしながら…。

さて、時間もなくなってまいりました。毎回インタビューの最後はこの質問をさせていただいています。

 …「人生」とは…?

栗野:いや〜突然、道なかばの僕にそのようにいわれてもねぇ…。

石原:すみません「半生」とは…で、ともかく…。

栗野:何ですかねぇ…
「学びの連続」というやつですかね。
ですから…やめようと思ったこともないし、
自殺しようと思ったこともないし、
19才ぐらいの時から退屈ということはなくなっちゃいましたね。
それまで時々あったんですが、
ある日退屈というのは退屈だと思うから退屈なんであって、
自分が面白いと思うと何でも面白いということを、
ふと感じたんですね。
そこからずっと1日たりとも退屈だと思ったことはないですねぇ…。
ですから人生とは学びの連続であるし、
喜びの連続ですね。

石原:幸せですねぇ…。

栗野:要するにたえざる自己革新と自己発見の連続だと思いますよ。
それは僕にとってはおしゃれすることと、まったく一緒なんです。
意外と黒も似合うんだなとか、
ずっと似合うと思っていた紺が今日は似合わないんだなとか、
今1番好きなグレーはこの年令で似合ってるけど、
そういえば去年はあまり似合ってなかったなとか…。
お陰様で服とのかかわりで自己発見したり、
ブレークスルーできることがすごく楽しいですよ。

石原:服をそのように楽しんでいれる状態というのは、
得なことでしょうね。

栗野:「似合う」ということを
あまり気にしない方がかえって似合いますよね。

石原:自分で「これはどうだ」と見せびらかそうとすると、
あまり受けなかったり…
さらっとやって今日たいしたことないと思ったのが、
意外と好評だったりすることはよくありますよね。

栗野:あります、あります、すごくあります。
生きていることがそうじゃないですか。
これ完璧でしょうと思ったのが全然アウトだったり、
今ひとつかなぁと思ったのがすごくヒットしたりしてね…
やっぱり1人で生きていないんだなぁということでしょう。

石原:なるほど…。
自分は自分を見る時かえって、
固定観念で見ているものかもしれませんね。
人はその人をみる時たくさんの中の1人だからどうってことないんで…。

栗野:そうですよね。
それはね…デビッド・ボウイがそういう風に言っているんですよ。
「自分は人を映し出す鏡だ」って。
それはとってもいい言葉だと思いますね。

石原:そうか…彼らの音は、彼らのスタイルは…
自分の言葉をもっていることですね。

栗野:そうですね。僕が好きな人たちは特にそうですね。
自分をよく見ている、わかっている人たちですね。

石原:そうですか…
今日は予定時間をあっという間にオーバーしてしまいました。
お忙しい中、本当に長時間ありがとうございました。





>>いかがでしたか?この対談は2003年12月8日、東京で行なわれました。
  次回のオクノジャーナルをお楽しみに!





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