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第2回「まず『作品』が良いか悪いか、それだけなのです。」

木内:民族意識はみんな持ってますよ。
そしてちゃんと国旗もある。
けれども、王室を持っている民族というのは
幾つもないのですよね。
オランダとか、イギリスとか。

石原:しかも、それぞれ長くてせいぜい数百年ですから。

木内:日本は皇室を持って千数百年。
それだけの歴史を持った民族、そのことに思いを馳せて、
嬉しさというか、民族意識が急に芽生えて、
これは大事なことだなとつくづく思いましたね。

石原:最初にその民族意識を感じられたのは?

木内:昭和48年が最初でしたか。たしかフランスで。
そのあとがスペイン、ギリシア、ハンガリー、
それからニュージーランド。
この順で優佳良織の展覧会をしました。

石原:国を代表する作家として招待されていますね。
これは普通の人間にはなかなか体験できないものですが。

木内:私の場合はただ、びっくり。「なんで私が」って感じです。
田舎にいる私がなぜ選ばれたの?と。
でも聞いてみると、東京で展覧会をやったときに、
大使館の方がよく見にいらっしゃってたみたいで。
それであとから大使館から招待状がくるのです。

石原:それも突然のことで?

木内:ええ。その国の文化庁からですね。
美術展の主催は文化庁が多いよう です。

石原:他の方とご一緒のこともあったそうですが、
その時はどんな方々と?

木内:例えば、人形、刀剣、兜。
陶芸では沖縄の人間国宝の方もおられました。
皆さんそれぞれ日本の第一人者。
ちょっと戸惑いましたが、やはり嬉しかったですね。
招待先では文化庁などの責任者がつきっきりです。
レセプションにはその国の有名な作家や
文化人や芸術家の方々がたくさん集まるわけです。
スペインやハンガリーの時もそうでした。
100名くらいの方が招待されて。

石原:フランスでのパーティーはどんなところでした?

木内:主催がフランス国営放送とシャイヨー宮殿。
展示会場はこの2か所でしたが、
レセプション・パーティは国営放送のメイン・ロビーでした。
非常にシンプルな感じで、展示作品を見ながら
そこでパーティをするのですね。
スペインのバルセロナ市が主催した時も、
国をあげてのおもてなしでした。
食べ物にぜいたくをするというのではなくて、
しかしなんとなく厳かな感じの会合で。
由緒正しくというか。市長さんは「一級礼装」といういでたちで、
いっぱい勲章をつけておられました。
ハンガリーの場合は国立博物館。
15世紀に建てられた、
壁が朽ち落ちて穴があいているようなところなのですが、
この会場でパーティを催すことが名誉なのだそうです。

石原:その頃のハンガリーはまだ社会主義ですよね?

木内:そうです。
政府と美術家協会との主催で、美術家協会の人達が
準備のすべてをしてくれました。
どこかで監視されてるような感じもありましたが、
すぐに親しくなり、とても親切でした。
ハンガリーでは世界的に有名な美術評論家の方が、
評価の高い美術誌に優佳良織について書いてくださいました。
つい最近も何ページかの特集を組んでくれたのですよ。
どこの国に行ってもなのですが、略歴や作家活動何年とか、
どんな賞をもらったか、などは
ほとんどふれられないのですね。
まず「作品」が良いか悪いか、
それだけなのです。評価というのは。

石原:外国から最初に招待された時は日本では全然有名じゃなかった…

木内:全然というよりも散々たたかれていた、
といえるでしょう。
なんであんな織物なんかがと。
やっぱり古い物が良いと批判されたりして。
新しいものはなかなか評価されないのです。
やはり肩書き社会、額縁社会というか。
その作品が良いか、悪いかじゃなく、
まだ始まったばかりではないかということなんです。

石原:なるほど。

>>さて次回は、制作の大変さと、ギリシアでのすばらしい体験のお話です。
  お楽しみに。





2006 spring
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木内綾と優佳良織略歴

昭和37年「優佳良織工房」発足
昭和43年-開道百年記念式典にご来道の昭和天皇・皇后両陛下に献上
昭和45年優佳良織民芸館 開館
昭和48年「日本の美術展」招待出品(パリ市)
昭和51年ハンガリー国際織物ビエンナーレ招待出品/「日本工芸展」招待出品(スペイン・バルセロナ市)
昭和52年日本民芸公募展、最優秀賞/「日本伝統・現代工芸展」招待出品(ギリシャ・アテネ市)
昭和53年国際織物ビエンナーレ、金賞
昭和55年優佳良織工芸館 開館
昭和57年「優佳良織・木内綾展」(東京・大阪・九州)読売新聞社主催
昭和58年ニュージーランド・国立オークランド博物館主催「木内綾展」/奈良薬師寺に「旙」四流奉納
昭和61年国際染織美術館 開館
昭和62年日本現代工芸美術展招待出品、内閣総理大臣賞/北海道文化賞
平成元年通産省ふるさと再発見、通産大臣賞
平成3年雪の美術館 開館
平成7年文化庁長官賞
平成10年北海道功労賞
平成12年「優佳良織/木内綾作品展」朝日新聞社主催(東京・神戸・名古屋)

これまでの特集対談

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優佳良織 織元
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