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第2回「きちんと生きてきて、今を大事に生きている人にとっては、 未来はこわくない…。」 石原:ところで、ユナイテッドアローズ(UA)では、 今どんなセクションを主としてやっておられるんでしょうか? 栗野:3年程前から「クリエイティブ ディレクター」です。 その前は販売促進部の部長で、 ずっとバイイングもやっていたんですが、 3年前に優秀な人を見 つけてきてバイイングを離れました。 近年「ディストリクト」という店を立ち上げることになって、 またバイイングも始めましたが。 ですから今は役員とディストリクトのディレクションと、 UA全体のクリエイティブ ディレクションを兼ねています。 石原:「クリエイティブ ディレクター」というのは、 具体的にはどのようなことをやるのでしょうか? 栗野:一般に「クリエイティブ ディレクター」というと、 その代表はトム・フォードです。 あんなに有名でも立派でもないですが。 彼はデザインも兼任してはいますが、それだけではなくて、 広告宣伝も全体のビジョンも彼の仕事です。 つまり、自分も含めて多くの人を使って、 ある方向にすべてを具現化していってるわけです。 石原:なるほど…。 栗野:クリエイティブ ディレクターとしては私は、 すでにUA全体の2004年の秋冬までのテーマを出しています。 例えば04年の春は「Everybody loves somebody」というテーマにしました。 このフレーズはディーン・マーティンの昔の曲にありましたよね。 その「エブリバディ ラブズ サムバディ」から…こういう気分で、 こういう色で、こういう感じの服を2004年はつくろうよ。 こういうイメージ・メーキングをしていきましょうよと。 広告宣伝部の人たちや、 それぞれプロの方と一緒にすすめて行きます。 そのように商品と会社のイメージ・メーキング全体にかかわることが、 クリエイティブ ディレクションである、 そのように僕は解釈しています。 石原:なるほど…。 栗野:UAのやっていることは、大変範囲の広いものです。 ですから、商品を細かく深堀りするというよりは、 その「時代の気分」をどうとらえるか…、 今ってどういう時代なんだ、ということを 形にすることが大事だと思うんです。 04年秋冬も違うテーマですでに出しています。 石原:それはまさに「時代の気分」ということで考えられるのですか? 栗野:常に世の中は「現在」という時間しかないといえます。 「現在」に過去も未来も包括されていますよね。 「past」「present」「future」というのは、 常にいまの自分の中にあって…。 「過去」をリファレンスし、「現在」に起きていることを見ることで、 「未来」を予見することができますよね。 石原:なるほど…。 栗野:いかに未来をクリアに形にできるか、 というのは過去に対するレヴューと現在を どれだけしっかりみているかにかかるのだと思います。 少し哲学的な言い方をすれば、 きちんと生きてきて、今を大事に生きている人にとっては、 未来はこわくない…。 と僕はいつも言っているのです。 生意気に聞こえるかもしれませんが、 将来に対して不安があるというのは、 結局過去を真面目に生きてこなかったのではないかと…。 石原:いや、ちょっと耳が痛いですね…。 栗野:いや…、僕のような若造が言っても意味がないでしょうが…。(笑) ただ、ファッション業界で「フューチャーなことやっている」と お話しすると、まるで予言者とか占い師のように思われて、 「何か未来が見えてくるのか」と言われますが、 そんなことは絶対にないですね。絶対に…。 ただ、新聞はわりにこまめに読み、 美術館や映画館によく行くし、 業界以外の人ともよくつき合っています。そうしていると、 時代は今こういう方向に向かっているんだなあとわかるんですよね。 石原:はぁ。 >>次回は「時代の気分」を読み、メッセージを発信する栗野氏の ビジョンに迫ります。お楽しみに。
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