第6回 生地の更に先の糸あたりまで、社内に専門家がいます。」

石原:オリジナルの生地までお作りになっておられるんですか?

栗野:やってますよ。まだまだではありますが…。
かなり進んできましたよ。
生地の更に先の糸あたりまで、社内に専門家がいます。
そういう物作りについては、相当投資してきましたし、
かなりいい感じで物作りの
下地はできつつあると思います。

石原:UAを立ち上げた時に、今おっしゃっている
「スーパーSPA」のイメージというのは、
すでにお持ちだったんですか?
そこまでやらなければ…と。

栗野:そうです。
そこまでやらなきゃ勝てっこないという。
仕入れて売るというのは
他の誰でも同じものを仕入れることができるわけですから。
だから絶対自分達の
オリジナルを作らなければならないと。
しかもオリジナルというのは、
仕入れた品と品のすき間を埋めるといった程度のものではなくて、
自分達が一番自信をもって
おすすめすることができるもの、
というのでなければ話しにならない、
ということがスタートの時からありました。

石原:しかもメーカーのような立場ではなくて…。

栗野:そうですね。
メーカーだったら卸さなければならないから、
誰が買ってくれるかわからないですよね。
僕らは自分のチャンネルで売っているから。
お客様の顔が直接見えないにしても、
販売員の顔やデータは見られますよね。
だから、今後はUAが一番力を入れていくのは
「ものづくり」でしょうね。


石原:それが「スーパーSPA」ですか…。
似ている店は他にどこかありますか?

栗野:しいて似ている業態を探せば、
それは「コムデギャルソン」かも知れません。
あそこはデザイナーブランドだけど、
自分達で小売をやっていきますから。
フランチャイズ店もありますが、
どんどん自社販売の比率は上がっていますからね。
ただコムデギャルソンとの一番の違いは、
あれほど僕らはクリエイティブじゃないということです。

石原:なるほど。
でもコムデギャルソンは
1人のデザイナーが統括する形態ですが。

栗野:いえいえ、
あそこはいくつもブランドを持っていますし、
どれも出来がいいんで…。
あの会社にとっての最大の違いは何ですかと言われれば
「クリエイティビティ」ですし、
うちにとっての最大の違いは「販売力」です。
やっぱり「クリエイティビティ」までは行かないですよ。
だから今後もっとUAは
「クリエイティビティ」を持った「販売力」
ということにならないと話しにならないですよね。

石原:なるほど…。
UAはやはり「販売力」が原点なのでしょうね。

栗野:ええ、小売屋なんで
良い販売員がきちっとした接客をしてお買い上げいただく、
ということは社長の重松とか他のスタッフから
度々発信されていることです。
「店はお客様のためにある」というのは
UAの終始変わらないテーマです。
いかに顧客満足度を高めていくかというのは、
僕らの究極の目標です。
だから、その結果が「世界一の専門店」であって、
先に「世界一の専門店」をめざしたわけではないんです。

石原:なるほど…。
水準があがれば世界一になっていくと…。

栗野:そうです。満足度の高さにおいて。

石原:ところで栗野さんは、
ベルギー、アントワープにある美術学校の
卒業審査員をなさっておられましたが…。

栗野:ええ「王立アカデミー」ですね。
96年から一昨年までやっておりました。

石原:そのきっかけは?

栗野:93年にアントワープ王立アカデミーのファッション学部の
創立30周年インスタレーション、というのがあったんです。
それを見に行った時、
たまたま案内していただいた方が学部長だったんですね。
ファッションだけでなくアートや
その他のいろんな話をしているうちに気に入られて、
「あなた面白いから、そのうち審査員やってよ」と言われたんです。
いやぁ、俺なんかとてもとてもと言っていたんですが、
その後もお声がけをいただいたりしていて、
96年には「それじゃ」と行ったんです。
それ以降、外部の審査員として最長になってしましました。
7年間も。




>>次回は「王立アカデミー」のハイレベルな教育について語られます。
  お楽しみに。





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