第3回 小菅正夫/旭山動物園園長
インタビュアー/石原嘉孝/オクノ社長
「君、その程度の気持で動物園をやろうとしても
無理だ。辞めて他の仕事探したら。」ですよね。
大げさでなく、それがほぼ毎日ですよ。
小菅:ところがです。動物園に入ったら、
全く無知であることに気づかされたのです。
自分の好きな虫、キリギリスやセミの飼い方とかネズミの増やし方なんかは知ってました。
でも動物園というのは世界中の動物を相手にしています。
旭山動物園にいる動物のことだけ知っていてもダメなのです。
知識をそれなりに持っていなければ、全然みんなについていけないんです。
土俵に上がれないんですよね。ですから入ってからの3年間は、
本当に根をつめて勉強しました。
石原:それほど旭山動物園の先輩スタッフは、
みんな高度な知識を持っていたんですか。
小菅:知識のかたまりですね。特に牧田さんは、
ありとあらゆることを知っているのですよ。
猿が世界中にどれぐらいいて、その分布がどうで、
その主な生息環境はこうであるとか、毎日のように論じるのです。
僕が入って早々の頃ですが、朝出会うと彼がポケットから鳥の卵を取り出して
「小菅、これ何の卵だ」と言うのです。入ったばかりですから、
わかるわけないですよ。
だってうちの動物園にはかなりの種類の鳥達がいるのだから。
「わりません」と言ったら、牧田さんは答えを教えてくれないんですよ。
その揚句、「君はどうやら動物園に向かないね。動物園で仕事をするには世界中の動物のことを知っていなければできないんだ。
「君、その程度の気持ちで動物園をやろうとしても無理だ。
辞めて他の仕事探したら。」ですよね。大げさでなく、それがほぼ毎日ですよ。
石原:イビリか、はたまた愛のムチか…。
小菅:そんなこともあって、僕は動物百科をはじめ、
ともかく動物に関して日本語で書かれているものは全てのものを読みましたよ。動物園協会刊行誌に毎月「動物分類学」の記事が載っていたのですが、
これは市販されていません。
それで菅野さんにお借りして、当時まだコピー機がなかったので、
全部書き写しました。3度目の猛勉強、そして最大の猛勉強でした。
石原:園長にとって、牧田さんの存在は実に大きなものですね。
小菅:いやぁ本当に彼が引っ張り上げてくれた、と言えますね。
若き日の4-1+2人組(左から)小菅、牧田、マリ、
阿部各氏と飼育係A氏のご子息。
>>生き物に関する多くの知識を持ち、
土台をしっかり作っていなければ、
「生きているものとは何か」が見
えないんですよ。
|
|
|
|
2008 summer |
|
copyright (c) 2008 by OKUNO all right reserved |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|