第2回 西川将人/旭川市長
インタビュアー/石原嘉孝/オクノ社長
私が最初に門をたたいたのは小沢一郎さんです。
石原:何歳くらいで「政治家」希望をお持ちになりましたか?
西川:これもパイロットと同じで漠然でしたが小学校の3、4年の時には意識していたように思います。
石原:パイロットになりたいという子供の憧れはわかりますが、
その頃すでに「政治家」になりたいと思うのはスゴイですね。
身近にどなたか政治に関わっている人がおられたのですか?
西川:身近には誰もおりません。
歴史の物語などを読んだり聞いたりしていると、
そこに必ず出てくるのは政治家ですよね。
石原:「武将」ではなく「政治家」ですか。
西川:まあ、それは武将でもあり政治家であり…といった感じだったと思いますよ。
いま話していて気付きましたが、その英雄達、
武将のことと、
私の自衛隊志向はオーバーラップしていたのでしょうね。
石原:他国を攻め征服していくのは「武将」の面であり、
それを統治していくのは「政治家」です。
西川:私は武将達が持っている、自制する心や規律を創り上げる能力に、
魅せられたのですよね。武将達は、それぞれは個性があり、
やり方が違うところがありますが、物語を読むにつけ、
カッコイイなぁと思っていましたよ。
石原:ところで「政治家」という言葉そのものが持つ政治家像を、
すでに小学校3、4年で持っておられたと思いますか。
西川:まぁ、小学生ですからそんな具体的イメージではありませんよね。
本当に具体的な「政治家」のイメージを持って、
政治家になりたいと思ったのは、大学生になってからです。
大学に入る前後から、政治家の本などを結構読みあさっていました。
私が最初に門をたたいたのは小沢一郎さんです。
当時、若くして自民党の幹事長をなさっておられました。
小沢さんが自民党から出ていって、細川さん等と新進党を創っていくのも、
私がまだ大学生の時です。
それらのことを見聞きしながら、
私はリアルに「政治」や「政治家」を意識していったと思います。
目の前に起こっている「現実の政治」についての本や
雑誌が数多く出てましたから、
私はかなり興味深く読みました。
石原:日本の戦後政治の大転換期でしたからねぇ。
西川:そのすさまじいエネルギー。
政策の違いがどうというより激しい権力闘争の状況に、
すごく興味を引きつけられました。
石原:市長は本当に「政治家」に向いているのですね。
私も多少政治っぽいことに関係したことがありますが、
どうも本質的に「政治嫌い」です。
西川:もちろん私も学生時代にイメージしていた「政治」と、
いま実際たずさわっている「政治」とはかなり違いを感じていますよ。
だから石原さんが「政治嫌い」という意味は分かりますよ。
でも「市長」には、『敵』というのは
基本的にいないんですよ。
石原:学生時代よく読んだ思想家の一人に、
埴谷雄高がいます。
彼の言葉に「政治は古今東西変わらぬ本質で動く。
『ヤツは敵だ。敵を殺せ。』という原理である」というのがありました。
相手の良いところを無視し、欠点をあげつらい、
相手をともかく打ち負かせようとするのが実際の政治であり、政治家だと。
西川:私の今の立場、「市長」というのは政治家であって政治家ではないんですよ。
多分「議員」の立場であれば、国会であれ地方議会であれ、
そういう党派性から免れることはできません。
でも「市長」には、『敵』というのは基本的にいないんですよね。
石原:いわゆる野党議員の人達もですか。
西川:ええ、その方々はどう思っておられるかわかりませんが…。
私の立場からは、何とか皆さんに理解をしてもらおうと思っているだけです。
市に市長は一人しかおりません。
ですから、どなたとも「敵対」ということではありません。
選挙の時は別かもしれませんが、
「市長」である限りは市民全体に常に責任を持っている立場です。
石原:市長は「議員」の経験はおありじゃないですよね。
西川:「議員」経験はありません。
おっしゃるように、国会などを見ていても、
相手の欠点と自党の方針をぶつけ合っていますね。
石原:党派性に縛られることなく市政をしていく、
ということは原点的に大事なことですものね。
政治は、「人々の幸福のため」という大きな目的目標のためではなく、
「貸した借りたの世界」でうごめいている面がかなりありますから。
西川:まあ、昔と違ってその辺は随分変わってきたと思っています。
いわゆる「政治制度改革」の良い面が少しずつは出てきているのではないでしょうか。
石原:しかし、「小選挙区制」が党の支配を強めて、
議員個人の意見意志で動ける余地がほとんど無くなってきましたよね。
西川:確かに今や衆議院は、政党選挙以外の方法で当選する事はほとんど不可能になりました。
大政党で立候補できれば当選に近いくらいの票は取れます。
あとの数千票ほどがその人の個人票という感じですね。
英国もそうで、全く関係のない地区に行って立候補するということも随分やっていますよね。
石原:それはコインの裏表で、政党選挙=小選挙区制が、
小沢さんが主張してきた「政権交代」の基礎的条件を作っていますから。
市長は、その政党政治下の議員を経験なさっていないのだから、
ドロドロの「敵対性」や「しがらみ」も少ないでしょうね。
西川:ええ、幸い今までのところはほとんど「しがらみ」に縛られることはなく、市民のことを第一に考えることができていると思っています。
これからもできるだけ明快さは失わないでいこうと思っております。
石原:それにしても持ち上げてくれる人が大勢いませんとね。
西川:そうです。持ち上げてくれる人、支持していただける人がいて、
票をいただかなければなりません。
その意味では先ほどの戦国武将とは全く違う立場です。
彼らには選挙がありません。
ただ、結果に生死をかけて戦うということでは、
私もまたそのような心構えでいるつもりです。
妻と歩いていても「市長は昨日女性と歩いていた」と
ウワサされたりしますよ。
石原:市長には「個人的な自由」は、ほとんどないのでは?。
西川:それはないですね。36万人の市長をやるとプライベートはゼロですね。どこに行っても皆さん私の顔をおわかりですし。
石原:東京へでも行けば多少は息抜きができるでしょう。
西川:東京に行く機会もほんの年に何回かという程度です。
それもスケジュール表でほとんど管理されておりますから…。
石原:皆の目をたえず意識していなければなりませんから、
いろいろと悪く言われることも多いようですが、政治家は、
総じて身綺麗にしているものだ、と私は思っています。
西川:少なくとも身綺麗にしていた方が良いですよね。
余計な仕事をしなくてすみますしね。
一般の方だったら、普通にやっていることのようなものですら、
叩かれることがありますしね。
石原:有権者はいつ、どこでどう見ているか分かりませんものね。
西川:妻と歩いていても「市長は昨日女性と歩いていた」とウワサされたりしますよ。それは選挙を受ける人の宿命です。
しかも、人生設計が建てられるようで建てられないのですよ。
もし選挙で落ちたら、生きる道を探さねばならないですからね。
ですから当面する政策課題に真っ向から突き進みながら、
一方では自分を信じて生きるしかしょうがないですよね。
「何があっても大丈夫だ、何とか生きてゆくさ」と言い聞かせながら…。
旭川市役所。かつて「日本建築学会賞」受賞建築物。
>>北海道や旭川には、素晴らしい美しい自然があります。
これを大事にしながら生かさない手はありません。
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2008 summer |
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