第4回 西川将人/旭川市長
   インタビュアー/石原嘉孝/オクノ社長


「旭山動物園」は私達日本人にしか
できないものだと思っていますよ。


石原:旭川市にとって旭山動物園の存在は大きいですよね。
「人間も動物と同じ」という視点で造った世界初の動物園として。

西川:従来の「動物園」は博物学や分類学の延長にあるものです。

石原:北海道、私たちの旭川はどうしていけば良いのでしょう。

西川:私は、外国の動物園をそれほど観たことはありません。
でも、たいてい動物達はオリの中に入れられて、
ジッと動かないでいるのものか、
サファリパークのように広いところに放し飼い状態にして人に見せるか、
どちらかの手法でしょう。
旭山動物園では、動物達が喜々として、まるで観ている人を意識して、
面白がって動き廻っているようです。
それだからこそ、今、外国からも注目される動物園になっているのでしょうね。

石原:西欧のキリスト教的思考では、
「人と動物も生命としては一緒」という考え方には、
なじめないものではないかと思います。

西川:日本人や東洋人は動物を神様と考える思考があり 、
熊やヘビが神様の化身であったりしますからね。
樹木にも、花にも、神様が宿っているとも考えますし。
西欧人にはこの発想は確かに難しいと思います。
そんな事をいうと神やキリストの冒涜になりますからね。
ですから「旭山動物園」は私達日本人にしか出来ないものだと思っていますよ。

石原:私は「旭山」を再興したスタッフの人々に、
「異質性・異物性」を感じます。彼らは、市役所の一員なのでしょうが、
かなりの「変わり者」だと思います。

西川:一般常識としてあった「動物園」と全く違うものを発想して創り上げてきましたからね。

石原:動物園ってなければならないものではないですから、
その存亡のギリギリのところに立たされていた当時、
スタッフの方々は必死に考えたのではないでしょうか。
        
西川:日本人は昔から外国コンプレックスや外国崇拝のような意識が強かったですよね。
その意味で、旭山動物園は「日本人の悪いクセ」みたいなものを蹴飛ばして、
出来上がってきたものだと思います。

石原:このような独創性、異端性、
異質性、革命性を発揮する人々の力がもっともっと旭川に欲しいものですよね。

西川:市長として、その事の必要性をつくづく感じていますよ。
でも、現実にはなかなか大変なことですが…。
それが一番頭悩むところですよ。

石原:既存のモノや「中央のモノ」「専門家のモノ」に依存しないで、
それらに疑問を持ち続け、自ら工夫する姿勢ですよね。

西川:専門家は、たしかに既成概念に囚われて新しいことを否定してしまう傾向があります。
新しい発想が疎外されたり、どこかにある発想を人に押しつけたりしますよね。
歴史をふりかえっても、いたずらに過去の思考に縛られない人達が、
いろんな改革のときに中心的な役割りをしてきました。
特に若くて「過去にこだわらない人達」には懐古ではなく、
「今」と「未来」しかないわけですからね。
旭山動物園も、閉鎖に追い込まれそうな困難な状況を切り拓いてきたのはそのような人達でした。
マイクロソフトを創り、ウインドウズを造り上げたのもそのような人たちです。
ラジオやテレビ、電話機を造った人も皆、当時は同じように
「異質的」な人だったのでしょうね。








ですから、小学校の時から、まずは
「英語を聞く耳」を育てていくことが大事です。


石原:市長は英語がかなりお上手だと思いますが、
これからはいよいよ英語が不可欠ですよね。
あのインターネット業界の最大手=グーグル社の哲学は、
「世界中の情報を整理し尽くし、誰でもアクセスできるようにする。」ということだそうです。
彼らはいま、自分で膨大な費用をかけて、大英博物館、
スタンフォード大学やハーバード大学の図書館の全資料をデータ化しています。
でも、そのデータは英語で整理されているものが大半だと思われます。
ですから、英語ができるかできないかで、データの利用にも大きな差が出てしまいます。
せっかくの情報の山があるのに、英語が出来ないと手も足も出せません。
        
西川:欧米では数カ国語を出来る人がたくさんいますよね。
何故かといえば言語の系が一緒で、ほとんど似ているわけですよ。
その点、日本語は孤立した言語ですから、他国語に馴染んでいくのは大変です。
小学校の時から、まずは「英語を聞く耳」を育てていくことが大事です。
それが出来れば、あとはボキャブラリーをどれだけ増やしていくかの問題ですよ。
英語が聞けて、話せる能力、英語教育がますます必要になってきていますね。

石原:これからの都市づくりには英語力強化が不可欠ですよね。
教育は少なくとも10年〜20年先を見ていないと答えは出ません。
でも、英語を自由に使えるかどうかは、情報を自由に取り入れ、
広く発信できるための絶対的条件でしょうから。
        
西川:かつての北海道の都市はかなりの公共投資があって、
官公需要も相当ありましたから、そのような「広く深い情報の受信や発信能力」は、都市づくりの原点と考えなくてもよかったと言えます。

石原:国際線のパイロットをやり、世界を広く知り、英語力もあって、
まだお若いという条件をお持ちの西川市長が、今回選ばれたというのは、
市民がそこまで考えた結果かどうかは別として、
市民の直感力がそこにあったような気がします。
        
西川:改めてそのことをじっくり考えてみますよ。






>>ほんの僅かの味の違いを楽しむ能力は日本人の特性ですよね。




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