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第10回 ホットマン創業者/田中富太郎
   インタビュアー/石原嘉孝/オクノ社長


私の顔を見ますとね、
「私らはお宅のマネを徹底的にしますからね。」とはっきり言われますよ。


石原: 今の日本のタオル製造は欧米などのものと比較してどのような水準のものなのでしょうか。

田中: タオルには品質、機能、仕上、更にはデザイン等の要素があるので簡単に比較できません。特に西欧のデザインは伝統と文化がありますからね。 アメリカは量産ものばかりですが、東欧も含めて更に市場の研究が必要だと思っております。
ただ一般にいえば、ヨーロッパのメーカーは、後継者もいなくなってほとんど消滅のようです。 中東で作らせていましたが今では中国製ばかりで、ハッキリ言って粗悪品しかないようです。
ついこの間のことですが、ノルウェイに行っている日本の女性が私どもの店に見えられましてね。 その方が、今回はどんなことをしても日本の上質のタオルを買って行こうと心に決めて日本に戻られたそうです。
そして、たまたま新宿でウチのタオルを見つけ、ウォッシュタオルを40枚お買い下さったんですよ。 その方がおっしゃるには「このようにシンプルで手触りも良く上品なタオルが欲しかったのよ。」「うれしいことに私の家のバスルームのタイルと同じ色と輝きなのよ。」ってね。

石原: はぁ…。

田中: その時にウチのスタッフがパンフレットをお渡ししながら 「私共のタオルは柔軟剤を使っておりませんので」とご説明したら「柔軟剤を使わなくって大丈夫?」と多少気にしながら帰られました。 だけどその後ノルウェイに戻られて何回も洗って使ったのだけど柔らかさも手触りもずっとそのまま…感激したとお手紙を頂戴したんですよ。

石原: 日本のタオルの品質はズバ抜けていて、世界のどこにも日本に比肩できるようなものは現在作られていないと言えましょうか。

田中: かなりのところには来ていますが、まだまだ勉強することが山ほどあります。私が見ても不満なところが一杯です。それだから楽しみもあるわけですよ。

石原: 一方、国内に目を移しますと…。
技術革新をして良質のタオル作りに努力なさっておられますよね。 国内の何社かはHotmanを目標に追いつけ追い越せとやってきます。 吉井タオルの社長は「綿が本来持っているすばらしいものを、いかにそのまま生かすかがタオル作りの基本だ」といって相当のレベルになってきているとお見受けいたしました。

田中: この十数年、中国からの輸入激増で日本のタオル工業が次々に後退し追い込まれて “セーフガード”(輸入制限)も見送られる中で、今治は国からの支援を受け、 愛媛県や今治市も財政支援をして官民挙げてのタオル復活にかけていますからね。 また、あそこにはなかなかの人材もいますし。

石原: 大阪のタオル組合の理事長もなさっておられる重里社長も「今治は金がくるんだ。だけどオレのところには大阪府も全く動いてくれなくて」と嘆いておられましたよ。

田中: その通りなんですよ…。

石原: ただ重里さんという方もエライもので、ご自分で発明された“酵素による晒し”の特許技術を泉州のタオル屋さんには無料で使ってもらっていると言っておられました。

田中: いやぁ・・・前からね、四国の代表的なタオル屋さんの藤高さんや近藤さん、 この人たちは四国タオル工業組合の理事長や幹部の方なのですが・・・。 私の顔を見ますとね、「私らはお宅のマネを徹底的にしますからね。」とハッキリ言われますよ。

石原: そして今ホットマンにようやく追いつきつつあるぞ・・・と。

田中: たしかに最近は良い品を作ってきていますし、人材も揃っています。これからウチの強い競争相手になってくると思いますよ。

石原: 若手経営者の方々は結構強気でした。
この数十年は中国の輸入攻勢にさらされたけれど、中国そのものが人件費の高騰に病みはじめ、 良い労働力も集まらなくなってきている、これ以上の圧力はもはやない。これからは我々の反撃の時だ・・・とね。 池内さんなんかはアメリカからヨーロッパまで攻めるんだ、というような意気込みでしたね。

田中: なるほどね。

石原: 大阪の重里理事長はちょっと角度が違ってて、国を挙げての国産品需要増を図るため、大手企業と官庁とを巻き込んだ大戦略をこれから仕掛けるつもりだ、とお話しておられましたが・・・。

田中: じわじわ競争力がついてきてますよね。


中級以上の物は中国に負けることはないと思います。
コスト競争をしても負けません。


石原: だいぶ時間も経ってしまいましたが、今後の御社の方向性のためにスタッフに言い続けたいことはどんなことでしょうか。

田中: 戦術、戦略をどれだけオーソドックスに皆ができるかに今後がかかっていると思います。やるべきことをしっかり自覚し、 それを正統な方法で実現していくならば事業は長く継続できます。でも築くことは容易ではありませんが、崩れるのはあっという間です。 「継続していくこと」は非常に難しいですからね。攻める方は楽なんですがね。

石原: そうですね・・・。

田中: ウチもやっと倒産の危機を切り抜けてこれから再出発です。

石原: 私は門外漢なので技術的な事はよく分かりませんが・・・。

田中: 例えば近年中国製タオルの輸入攻勢がありましたし、日本のメーカーや問屋も10社ばかり中国へ工場進出しました。 でも単純なレベルのタオルは別として、中級以上のものは中国製に負けることはないと思います。コスト競争をしても負けません。
ですから、中国の市場も考えるべきだと思います。 あなたも近日万博を見に上海へ行かれると言っておられたが、そのついでにぜひ向こうのタオル市場も見てきて下さい。(笑)

石原: たしかに中国ではとんでもない値段の外国製品を買い求める富裕層がどんどん出てきているようですし。

田中: そのようですね。

石原: ホットマンが更にすばらしいもの作りに邁進すれば泉州や今治も何とか負けまいとして努力してきます。 そうすると日本全体のタオルは一層発展していくのだなぁ、と私は外野席から勝手に気軽に考えますが、楽しみでもあります。

田中: まだまだウチ自信も7分くらいのところですから、これからもみんなで努力を重ねて参りますよ。どうぞ気の付いたことは教えて下さいね。

石原: これは恐れ入ります。本当に長時間ありがとうございました。



2010年6月1日午後。青梅市ホットマン株式会社にて。



 
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